セミナー冒頭、主催者である東京都を代表として、小池都知事よりビデオメッセージによる挨拶がありました。
ビデオメッセージでは、物流の重要性と物流事業者への感謝を申し上げたうえで、セミナーで紹介する事例などを共有し、さらなる効率化に取り組んでいこうと述べました。また、都民生活に欠かせない物流を守っていくには、一人ひとりの取組が不可欠であることから、荷主による一層の効率化や、消費者の再配達削減の取組について協力をお願いし、「みんなで守る、物流の未来」と呼びかけました。
東京都産業労働局から、現在東京都が取り組んでいる物流事業者への支援策を紹介しました。
現在の経済状況ですが、一部の業種や企業では、需要回復や賃上げの動きなどもあるものの、中小企業にとっては、長引く燃料費高騰や物価高、人手不足など、依然として厳しい経営状況が続いています。特に物流業界では、時間外労働の上限規制が適用されるなど、課題が先鋭的になっていると考えます。都といたしましては、こうした課題に対して、経営改善やDX、人材不足への対応などの取組をサポートさせていただき、都内経済の活性化につなげていく必要があると考えております。
東京都では、現在、経営相談や専門家派遣をはじめ、生産性向上を図るためのDXの後押しや、競争力を高める最新の設備投資への助成金などの支援策を展開しています。また、人材確保の強化のため、業種別の合同就職面接会や業界団体が行う資格取得支援への助成、社労士による相談なども行っています。
様々な支援策の詳細は、東京都中小企業振興公社や東京都の公式サイトなどで随時発信していきますので、ぜひご活用ください。
東京都都市整備局から、事業者が取り組んでいる物流効率化の事例を紹介しました。
東京都が実施したアンケート及び電話ヒアリング等を通じて、各企業から情報を得られた取組について、荷主の取組を3事例、物流運送事業者の取組を2事例の、合わせて5事例を紹介します。
1事例目は、ミネラルウォーターの製造販売を行う企業の取組で、工場から全国にチャーター便で配送していたものの、端数を運送するトラックの積載効率が悪いことが課題となっていました。これに対し、他社と共有できる配送システム等を構築し、同様の課題を有する競合企業と共同配送を行い、積載効率を向上させることで、車両台数を5%削減しています。
2事例目は酒類の卸売を行っている都内企業が、人員不足、コスト等の課題に対し、配送業務をアウトソーシングした事例です。アウトソーシングにより輸送コストが4%削減されたほか、人材の有効活用や運送事業者側の輸送の平準化にもつながっています。
3事例目は、荷役時間の削減により物流効率化を図った都内の卸売企業の事例です。これまでばら積み、パレット積みが混ざった状態で運ばれてきたため荷役に時間を要していた課題に対し、自社パレットを導入することにより荷役時間が3割削減しています。
4事例目からは運送事業者の事例です。ひとつ目は従業員の業務効率化や労働時間の削減に焦点を当てた取組であり、遠隔点呼ができるシステムの導入や、デジタルタコメーターの統一により、デジタル技術を活用することで、運行管理者の労働時間削減や、ドライバーの書類作成時間の短縮など、業務効率化を図っています。
最後は、比較的近距離にある配送拠点を集約、統合することで配送効率の改善を図った事例であり、配送拠点における維持管理コストの縮減のほか、ドライバーの業務時間も10%弱削減できたという効果が得られています。
本セミナーでは、物流効率化に関する事業を行っている企業にもご登壇いただき、オートロックが設置された集合住宅でも各戸の玄関ドア前への置き配を可能にすることで宅配便の配送を効率化する事例をご紹介いただきました。
弊社はスマートロックの開発・販売を行う不動産テック企業で、特に集合住宅向けのサービスを展開しています。その一環として、オートロックマンションでの「スマート置き配」を提供し、物流事業者の利便性向上に貢献しています。
このサービスでは、マンションのエントランスに小型のスマートロックを設置。認証された配送員のみがアプリを通じて開錠でき、荷物を玄関前に置く仕組みです。履歴が残るため、不正利用の心配もありません。また、宅配ボックスと併用することで、再配達の削減や入居者の利便性向上につながります。
導入物件のアンケートでも、97%が「再配達が減った」と回答しています。現在、全国20都道府県・52万世帯に導入されており、今後も拡大を進めてまいります。
弊社は大和ハウス工業のグループ会社として賃貸住宅の管理を担い、「D-ROOM」ブランドで全国67万世帯を運営しています。
物件の差別化を進める中で、ライナフ様よりスマート置き配の提案を受け、荷物受け取りの利便性向上と再配達問題の解決に共感し、導入を決定いたしました。
現在、オートロック付き物件7000棟のうち936棟で導入済みまたは導入予定です。導入形態は、自動ドア・電子錠・ゲート式の3パターンがあり、特に2~3階建てアパートが多くを占めています。
入居者様からは「宅配ボックスが満杯で使えない」「自宅にいないと受け取れない」といった課題が解決したと好評です。今後も生活利便性の向上と物流課題の解決に貢献してまいります。
国土交通省からは、国が取り組んでいる物流革新に関する取組の関する施策や法改正、予算などの国の動きについて、ご紹介いただきました。
昨今の物流業界では「2024年問題」への対応が急務となっており、政府は政策の推進を進めています。2023年3月に関係閣僚会議を設置し、6月には「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定しました。2024年には2030年を見据えた中長期計画を発表し、2025年4月には改正物流法の一部が施行予定です。
政策の柱は「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」であり、輸送力不足を補うため、積載率向上やモーダルシフト、再配達削減を進めています。また、標準的運賃の値上げによる賃上げを目指し、10%前後の引き上げを掲げています。
また、改正物流総合効率化法において、荷主・物流事業者等が物流効率化のために取り組むべき措置として、①積載効率の向上等、②荷待ち時間の短縮、③荷役等時間の短縮を掲げています。また、一定規模以上の事業者(特定事業者)に義務付けられる中長期計画、定期報告の記載内容のポイントや物流統括管理者(CLO)の業務内容に関してもご理解をお願いします。
最後に、令和6年度補正予算として、物流の革新や持続成長に向けた中長期計画を踏まえた取組の推進という形で、約80億円確保する予定です。物流の効率化としてモーダルシフト、物流拠点の整備のほか、商慣行の見直しや荷主・消費者の行動変容に関する事業を掲げています。
物流革新の方向性としては、物流トラックドライバーの賃上げとともに、物流の効率化を進めていくというような形で、荷主・運送事業者側双方がWIN-WINの関係を作っていければと、行政としては考えております。
東京都都市整備局から、東京都が取り組んでいる物流効率化の取組や、宅配等に関する都民の意識について紹介しました。
東京都では「物流の2024年問題」への対応として、荷物が工場や生産地から住宅に届くまでの各々の場面において、物流効率化に向けて様々な主体が協力して取り組むための社会的ムーブメントを醸成するプロジェクト「東京物流ビズ」を推進しています。
このうち都市整備局では、まず物流効率化に向けた広報展開の取組として、消費者向けには、再配達削減の意識啓発を目的としたイベントの開催や、FC東京とのコラボレーション、TVCMやポスター掲示などの広報活動を実施しています。また、物流事業者向けには、特に物流事業者と荷主の相互理解が必要と考えており、本日のセミナー開催やビジネス向け雑誌への広告等を通じて協力を訴えていきます。
そのほかにも、再配達削減に向けた消費者の行動変容を促すツールとして置き配バッグを無償配布する事業者への支援や、住宅地等において物流事業者が効率的に荷さばきを行えるよう、公共駐車場を借り上げて荷さばきのための駐車スペースを無償で提供する事業を行っています。
次に、2024年11月に実施した「宅配便の利用等に関する都民の意識」に関する調査では、特に20才代で再配達の発生が高いことなどが明らかになりました。再配達の発生理由としては、荷物の到着が事前に分からなかったことなどが上位を占めています。荷物の到着とその受け取りのタイミングをマッチングさせるなど、確実に受け取れる仕組みや、自宅外での受け取り方も含めて、多様な受け取り方を浸透させていく必要があると考えています。
また、「物流の2024年問題」ついては8割の人が認知しており、宅配便の受取日時指定や置き配の利用の行動変化にもつながっていることが確認されました。
これらの結果を踏まえまして、引き続き都民に向けた行動変容を促す啓発活動など、再配達削減に向けた取組を進めてまいります。